サル日記40

40への階段。

人と話をしたくない時に行く店を間違えてしまった話

 その日もスロットで負けた。たまの休みに1日中スロット打って負けた。

 

 3万円負け。

 

 5万、6万喜んでの昨今のスロットにしては軽傷であるとも言えるが、この日はとにかくストレスの溜まる負け方であった。耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、やっとつかんだチャンスゾーンであと1発が出ない。ジリジリと負債が増えていく。時間だけが過ぎていく。そんなときに隣にフラッと座ったオヤジはお座り一発フリーズ。なんだお前。ワザとか。せめて隣でなく、あっちの方でフリーズ引いてくれ頼むから。

 

 ああ、むしゃくしゃする。

 

 俺がジャイアンならのび太をぶん殴れば済む話であるが、40過ぎの非力なオヤジがむしゃくしゃしたらどうするか?

 

 そう! ヤケ食いでしょう!

 

 ここはいっちょ・・・シースーでもしばくか! そんなことを考えていたら、ちょうど目の前に最高峰の回転寿司屋として広く北関東に名を轟かせている「がってん寿司」が見えたので、反射的に入店したんですね。

 

 そしたらYO!

 

 この店、注文がタッチパネルじゃなかった(^^;

 

 うわー、そうだったわ~

 

 ヘタこいた~

 

 こんな夜、誰とも話したくないのに~。ただ1人で誰にも気を遣うことなく、食いたいものを気の済むまで食いたいのに~。カウンターに着席した俺の目の前1mには「らっしゃいませぇ~!」と叫ぶ屈強な店員がなんと・・・3名! 客は・・・俺のみ!(ぐにゃ~)

 

 俺が震える手でメニュー表に手をかけると、すかさず店員Aが「その表の他にカベにも本日のオススメがありますんでね!ご覧ください!味噌汁はあら汁と、今限定のどぐろの味噌汁がありますんでね!よろしければどうぞ!さ、お決まりでしたらお声かけください!」とまくしたてる。

 

 いやいや。いいから。落ち着いて検討させてくれ・・・と思いつつ、店員A~Cのプレッシャーに押されるかたちで「ア・・・アラヂルを・・・」と呟いたところを食い気味に「はいーありがとうございますー!」「はいカウンターにアラ汁お願いしまーす!」「かしこまりましたー!」と神速でバックヤードまで神経伝達。

 

 これはツラい。あら汁をすする姿も店員×3に凝視されている(気がする)。もし、このあら汁を食い終わったら奴らは俺に「さあ次は何にしますか!?」というプレッシャーを強烈に送ってきそうである。「この最後の葉っぱが落ちたら、私、死ぬの」という話を聞いたことあるが、そのときの俺は「この最後の汁を飲み終わったら、私、死ぬの」という心境で、汁をすするのが本当に恐怖であった。

 

 そのとき、うまばくに電流走る!

 

 ・・・お前、知ってた!? 回転寿司屋って・・・目の前のレーンの前を寿司が回ってるってこと! ということは注文せずとも、回っている寿司だけを食い続けたら一言も会話せずに済むじゃないですか! これだ! これで最後まで乗り切ろう!と意気揚々と目の前にきたシメサバを取った瞬間・・・

 

 「あ、新しくお作りしますよ!」

 

 と店員Bが俺に手を伸ばしたんです!

 

 「あ・・・アリガトゴザイマス・・・

 

 引きつった顔でシメサバの皿を店員に渡す俺・・・

 

 万事休す、である。

 

 結論。がってん寿司は非常に美味しいが、人とコミュニケーションをとれる精神状態のときに行くべき。